乳がんの診断の進め方

しこりがあった場合の一般的な診断の進め方について説明します。診断はいくつかの検査の結果を照らし合わせて行います。 なぜ複数の検査が必要になるのでしょうか?それは、それぞれの検査には強みと弱点があるからです。ひとつで全てのことが判断できるような「万能の検査」は、残念ながら現在ではまだありません。 診断するということは、からだの表面からはみえない「しこり」の性質を判断しようとすることですから、複数の検査を照らし合わせて、慎重に診断する必要があるからです。

診察時にはまず、視触診を行います。(1)しこりの場所・大きさ、(2)皮ふのへこみ、(3)皮ふの赤み、(4)乳頭分泌、(5)わきのリンパ節の腫れなどをチェックします。
検査として、(1)マンモグラフィ、(2)超音波検査(エコー)、(3)細胞診または組織診を行います。


マンモグラフィー

マンモグラフィーは乳房のレントゲン検査です。乳がんのしこりや乳がんに関係する石灰化(カルシウムの沈着)を見つけるための検査です。マンモグラフィーによる乳がん検診で、乳がん死亡が減ります。

乳房をはさんで撮影するので、「痛かった」と感じられる方もいます。特に「乳房の痛み」があり、マンモグラフィの検査を受けられた方は、もともと感じておられた痛みに検査の圧迫が加わって、「やはり”痛い”検査!」と思われるでしょう。

一方で、もともと痛みがない方からは、「意外と痛くなかった」という声も結構聞かれます。食わず嫌いせず、乳がんの早期発見のために思い切ってマンモグラフィーを受ける、そんな心持ちも必要でしょう(食わず嫌いは禁物です)。 放射線の量は、日本―ニューヨーク間の飛行機に乗ったときに浴びる宇宙線の量と変わらず、健康への影響はほとんどありません。

マンモグラフィーの弱点は、乳腺の多い人の乳がんを見つけ難いことです。若いときに多かった乳腺は、年を経るにつれて脂肪に変わります。マンモグラフィーでは、乳腺は白く、脂肪は黒く写ります。乳がんや石灰化は白いので、乳腺が多い人に乳がんがあっても、「雪山の白ウサギ」となり、見つかりにくい場合があります。見落としなどではなく、見つけることが物理的にできないわけです。一方、乳腺が脂肪に変わった人は、「黒山の白ウサギ」になるため、簡単に見つけることが出来ます。


超音波検査

超音波検査は、文字通り超音波を使って乳がんを診断する検査で、エコーとも呼ばれます。 乳腺は白く、乳がんは黒く抜けて写るので、コントラストがつきやすく、乳腺の多い人にも有用です。ただし、石灰化はやや苦手です。 大きなメリットとして、放射線を使わないので妊娠中も安心して受けていただくことが出来ます。


その他の検査

MRIやCTは、乳がんの広がりを調べるために行います。乳がんの広がりをみて、乳房温存手術が可能かどうかや、手術で切除する大きさを決めるのに役立ちます。PET-CTは、乳がん手術前に乳がんの転移が疑われるときに限り行います。